DevelopersIO 2024 FUKUOKA Day2 にて『共通認識を生む、「例え話」のテクニック』というセッションを行いました #devio2024 #クラスメソッド福岡

DevelopersIO 2024 FUKUOKA Day2 にて『共通認識を生む、「例え話」のテクニック』というセッションを行いました #devio2024 #クラスメソッド福岡

2024/07/29(土)に開催された DevelopersIO 2024 FUKUOKA Day2 のセッションスライド公開ブログです。 IT専門用語や状況を他者に説明するとき、うまく伝わらずにもどかしい思いをしたことはありませんか? このセッションでは、お互いの共通認識の解像度を高める「例え話」について、皆さんと一緒に考えながら説明していきます。
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おはこんばんちは。AWS事業本部 トレーニングチームのもっさんです。

みなさま、2024/06/28 - 2024/06/29 と2日間にわたって開催いたしました 『DevelopersIO 2024 FUKUOKA』はお楽しみいただけましたでしょうか?

本記事では、2024/06/29 にて私が登壇したセッション『共通認識を生む、「例え話」のテクニック』の資料公開および、口頭で説明した重要なポイントを文章にて記しています。

登壇資料

SpeakerDeck に資料をアップロードしております。

本セッションの目的

本セッションは「専門用語の意味が伝わらない!」とお悩みの方へ、解決策のひとつとして例え話の導入を提案するものです。

なんらかの専門領域をもつ人にとって、 専門外の方に自分の専門領域の用語を説明する シーンは少ないくないでしょう。
新たに入社した後輩、お客様、はたまた親族……など、さまざまな属性の対象者が考えられます。

皆様が直近で用語の説明を行った時のことを思い出してください。説明を行ったあと、「相手が定義を理解している」と感じられましたか?
特にITの専門用語は、概念自体が初心者にとって難しく、一度説明を聞いただけではうまく飲み込めないことも多くあります。

セッションでは、説明を聞いた人がこのうまく飲み込めない状態から「だいたいわかった」「なんとなくわかった」と言えるように、説明に例え話を織り込んでみましょう!という内容をお話ししました。
また、すぐに例え話を活用しやすいよう、例え話を導入する際の注意点についても取り上げています。

本セッションの想定聴講者

自分が持つ専門知識を、 専門分野が異なる方初級者の方 に伝える役割の方が対象です。
具体的な例を挙げると、

  • 新社会人、または専門領域の未経験メンバーの教育担当者
    • 技術トレーナー
    • 新メンバーのメンター
    • 新メンバーのエルダー
  • 専門分野が異なるお客様と関わるセールス担当者
  • 専門分野に関わらず、多くの方への発信をミッションとする広報・マーケティング担当者

などの役割の方を想定しています。

今回は、専門家同士で会話するケースはスコープ外としておりますため、ご認識の上資料のご確認をいただければ幸いです。

なぜ、例え話が必要なのか?

さて、そもそもなぜ説明に「例え話」が必要なのかを確認してみましょう。
例え話が必要な理由を一言でまとめると、 自分が行なっている説明と相手の課題を結びつけ、説明への興味や学習意欲を引き出すため です。

学習意欲というキーワードが出てくると、「仕事に必要な話なのだから、学習意欲に関係なくとりあえず覚える努力をしてほしい」という思いが生じることもあるでしょう。
しかし、大人が新たなことがらを学ぶ時には「とりあえず覚えてほしい」では不十分なのです。それは、こどもと大人では学習する理由に大きな違いがあるためです。

こどもの学習は教科内容の習得が中心、成人の学習は課題解決型

こどもの学習と大人の学習(成人教育)の違いを表にまとめました。

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こどもの頃は学校で教科書に沿って学習を進める『教科内容の習得』が学習の目的です。学習の内容は年齢や本人の学習習熟度によって定められ、将来なんらかの役に立つことを(本人や周囲の大人が)期待して学習をします。
一方、大人の学習では年齢ごとの学習内容は定められていません。自分や所属している組織の問題や課題を解決することを目的として、学習を行います。そして、その学習内容は将来という長い目ではなく、より目先の課題や問題を解決することが期待されています。
例えば、あなたが「AWSの学習を行っている」状態だとします。AWSを学ぶ理由として、「30歳の人はAWSを学ぶように決められているから」と答える人はほとんどいません。やはり「自分が所属している組織で、オンプレミスサーバーをクラウドに移行する計画があり、クラウドについて知っておく必要があるから」などの明確な課題があり、その解決策として学習という手段を用いている方が多いでしょう。

説明の話に戻りましょう。
大人の学習は「目先の問題・課題を解決する」目的があるからこそ行っているものであるため、あなたがが行っている説明も相手の問題・課題を解決するものであると、納得してもらえれば興味をひくことができます。
ここで例え話を使うことで、 今あなたが説明している内容相手の中にある問題・課題 が紐づき、説明を聞くことに対する納得感が生まれます。

具体例と例え話の違い

例え話とよく似た説明テクニックに、「具体例」があります。2つの違いは

  • 具体例:今話した定義に当てはまるものを、 話している世界の事実 に基づいて例を述べること
  • 例え話:今話した内容を 日常生活に置き換えて 説明すること

です。

さっそく、違いの具体例を挙げてみます。

【前提】
あなたは新人に、サーバーとは何かを説明することになりました。新人が持っているテキストには「サーバとは、特定の役割をもつコンピュータのことです」と書かれていますが、新人はいまいち理解できていないようです。

【具体例】 IT の世界の話を、IT 世界の実際の動きを示して説明する
Webサイトを閲覧するときには、Webサーバにアクセスしています。
Webサイトで商品を検索するときには、Webサーバのほかにもデータベースサーバが使われています。

【例え話】IT の世界の話を、レストランというITとは別の世界に置き換えて説明する
レストランに行った時を想像してみましょう。
オーダーをとる人、調理をする人など、それぞれの役割があります。ITの世界でも同じで、サーバがそれぞれの専門家として仕事をしています。

具体例は、説明したい事柄と同じ世界で話をすること、例え話は別の世界に置き換えて説明すること、と捉えていればOKです。

例え話をするときの注意点

例え話をするときの注意点は2点です。

  • 相手の世界を基準に例え話をつくること
  • 正確さにこだわりすぎないこと

話している相手の世界を基準に例え話をつくること

1つ目は、「相手の世界を基準に例え話をつくること」です。
例え話は聞き手の日常生活にまつわるものでないと、納得感は生まれません。そのため、相手のバックグラウンドには留意しておく必要があります。
例えば「右」を説明するときに「お箸を持つ方の手がある側です」と説明しても、お箸を使わない国の出身の方には伝わりにくいです。
特に大勢の聴講者に対して同時に説明する際は、多様なバックグラウンドを持つ方がいる可能性に留意し、できるだけ共通して体験できるものを例え話にとりあげましょう。

正確さにこだわりすぎないこと

2つ目は、「正確さにこだわりすぎないこと」です。
私の経験上、これは深い専門知識をお持ちの方がより陥りやすい落とし穴です。
例え話をとりあげようとしても、説明したい専門用語と日常生活の例えではさまざまな差異があり、「正確な言い換えにならないのでは?」と不安になってしまったり、例え話そのものをやめてしまうケースがあります。
「違うところはあるけれど、これでよいのかな」と悩む気持ちはわかりますが、 そもそも例え話を用いる目的は「知識の関連付けを行う」ことであり、正確な説明を行うことではない、と割り切ってしまいましょう
例え話の役割は、相手にとっての理解の入り口をつくることです。入り口さえできてしまえば、説明を改めて読んだり、のちのち調べ直すことで正確な理解を補うことができます。むしろ、正確さにこだわり難しすぎる説明をすると、相手にその分野自体への興味を失わせてしまうリスクがあります。

まとめ

  • 「例え話」は学習者の課題解決とリンクさせ、学習意欲を促進するために有効
  • 例え話をするときに気をつけること
    • 相手と同じ世界の話ができているか?
    • 正確さにこだわりすぎていないか?

上記のポイントをおさえ、皆様の業務で例え話を活用できる支えになれば幸いです。

さいごに

本記事は『DevelopersIO 2024 FUKUOKA』へご来場いただいたお客様よりセッション資料公開のリクエストを受け、資料と原稿をもとに書き起こしたものです。
開催から数ヶ月経過した現在でも、本セッションが資料公開のリクエストをいただけるほどお客様の心に残っていることを大変嬉しく思います。
リクエストをくださったお客様、誠にありがとうございました。今後ともクラスメソッドのイベントをお楽しみいただければ幸甚です。

引用・参考文献

成人教育学 の 基本原理 と提起 職業人教育への示唆- 渡 邊 洋 子
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/mededjapan1970/38/3/38_3_151/_pdf)

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